糸森環 著 角川ビーンズ文庫 2016/11月読了 ★★★★
糸森環さんの新刊ということで、さっそく購入したけれど、実はそんなに物凄く期待していたわけではない。この人の作品、新しくなればなるほどパワーが落ちている、というか、小さくまとまってしまってるような気がする。私の中ではやはり、一番面白いのはウェブページに発表していたもの、ということになってしまう。とはいえ、そのウェブ小説が書籍化されなければ、私は彼女の存在も知らなかったわけなんだけど。
彼女がウェブで連載している「She & Sea」が書籍化された時、私はほとんどカズアキ氏の表紙に惹かれて購入した。そして中味を読んでなんともいえない衝撃を受けたのを覚えている。ありえない設定なのにリアルで生生しい。というかグロい。キャラクターの魅力に心を奪われ、緊迫感に満ちた物語に引き込まれ。1巻を読み終わると、ウェブに掲載されていた続きを徹夜して読んだ。ウェブで小説を読んだのはこれが初めてだったかな。彼女のウェブの作品は、たいていどれも良いところで未完のまま止まっていて、それが辛い。それからほどなく、連載中のほかのウェブ小説「F」も刊行された。こちらは「She & Sea」以上に凄い展開で、やはりめちゃくちゃはまった。ついでに言うと一番初めに書籍化された「花術師」も非常に面白い。
というわけで、私が少女小説にはまった理由の何割かは、この方の小説にあるので、私にとっては特別な作家なんだけれど。うん、だからあの興奮をもう一度味わわせてくれないかな、と期待している。ただどうも最近は、面白いんだけれど、なんというか、特別な感じがしない。「令嬢鑑定士」についても、その辺まったく予想通りだった。キャラクターが変人だらけで結構笑える展開だったのが、最近心が弱くなっている私にとっては逆に良かったかも。醒めた性格のヒロインが妙にかわいい。続編がでたらまた買いたい、と思う。