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読書メモ

ネタバレありです  ★★★★★ 傑作だ!  ★★★★ 満足  ★★★ 普通に面白い  ★★ なんか足りない  ★ うーん・・・

「幽霊伯爵の花嫁 恋する娘と真夏の夜お悪夢」 

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「幽霊伯爵の花嫁 恋する娘と真夏の夜お悪夢」 

宮野美嘉著 小学館ルルル文庫 2016.8.27読了 ★★★

 ここ数年、ラノベにはまっていた。といっても、ラノベの中でも、あまりポピュラーでない、乙女系ラノベ、いわゆる少女小説に。5年前の自分が知ったらびっくりだろう。

 完全な現実逃避である。仕事でストレス溜まりまくっていた頃には、睡眠時間を削って1日1冊ずつ読んでいた。で、睡眠不足で仕事に支障をきたし、さらにストレスが溜まる。悪循環。

1年半前に仕事を辞めた。それからも少女小説を読み続けてきた。もはや仮想世界が私の人生である。Reading is my life. しかしそろそろ飽きてきた。だってワンパターンなんだもの。で、別の刺激を求めて、最近はホラーやミステリーを読む割合が増えた。それでもやっぱり小説なんだよな、私の仮想世界を支えるのは。動画やゲームじゃなくて。

 少女小説にいちばんはまっていた頃、よく考えていたことがある。もしも少女小説に全く馴染みのない知り合いが、仕事か何かでどうしても読まなくてはならなくなったとして、彼(彼女)にどの作品を紹介しよう?要するに、自分のおすすめは何か。

 まず思いついたのは、作家が少女小説の世界を完全に客観化していて、意識的に悪乗りして楽しんでいる作品。(「贅沢な身の上」など)こういうのは、大人でも笑える。

 それから小説として普通に面白い作品。しかし、これが実は難しい。なにしろ少女視点だからどうしても読者が限定される。昔の少女漫画なんかでは、かなり普遍的なテーマを扱ったものがあったんだけど、ラノベはやっぱり欲望の充足を優先させる作品が多い。それでも「首無し騎士と首の姫」シリーズなんかは骨格がしっかりしていて面白いと思う。巻を重ねるごとに追い込まれるスリリングな展開と、そこから一発逆転する爽快感。

 そして、とにかくエネルギーのあるもの。多少話に無理があろうが、ご都合主義だろうが、そんなことが気にならないほど作品世界に引き込まれる。私にとっては糸森環の「F」「She & Sea」「花術師」。それからかいとーこの「詐騎士」などがそうなんだけれど、これが全部もともとWeb小説。力のある作家にとっては、編集者は必要ない場合もあるのかも。この人たちには心のおもむくままに書いてもらいたい。逆に編集者が入ったほうがずっとよくなる作品もあるみたいだけど。(「薬屋のひとりごと」とか)

 最後に、キャラクターが特徴的で魅力がある作品。「幽霊伯爵の花嫁」シリーズはここに入ります、わたし的には。ああやっと、この作品に言及できた。もう疲れたからいいかな、ここまでで。

 いや、せっかくだから作品についてもうちょっと触れる。「幽霊伯爵の花嫁 恋する娘と真夏の夜お悪夢」を読了してまず感じたのがあまりの運命の理不尽さ。他人から見るとわけのわからないすれ違いによる悲劇。もちろん主人公の幽霊伯爵夫妻のことではなくサブキャラクターの話なんだけれど。そして結局無残な最期を遂げた彼らも幽霊になった後に誤解が解け、仲直りするというハッピーエンド(?)。

 そしてよく考えたらこのシリーズ、そんな話ばっかりだ。登場する幽霊たちは誰も彼も本当に不幸な死に方をしている。そして主人公の「花嫁」も、幼少の頃戦争によって一族郎党皆殺しになり、一人だけ生き残っている。主人公が超前向きな性格で、現在の主人公夫妻及び幽霊たちが幸せそうなので、うっかり忘れてしまうけれど、かなりシビアな世界観だ。

 巻末のあとがき。作者は悲惨な顛末で幽霊になったサブキャラの女性について「普通に生まれてこなかった彼女ですが」と言及したあと、「ちなみに作者である私も彼女と同じく普通には生まれませんでした」「生まれつき染色体異常があって身体的に普通ではないのです」と告白をしている。さすがに読んでいて驚いた。そして納得した。彼女の作品全てに共通する「理不尽さ」と、それをも糧にする主人公の逞しさは、彼女のこだわりであり、心の叫びなのだ。そういうのはやはり強い。

 ただ、この作者、宮野美嘉さんに関しては、少しそこから離れて客観的な視点を持ったほうが良いと思う。私、この人の作品はほぼ全部読んでいるけれど、どうしても自己模倣が目立つのだ。好きなだけに気になってしまう。ラノベ作家はとにかく量産しなければならないみたいだし、大変だとは思うけれど。頑張ってほしいな、と思う。

 最近少女小説というかラノベに満足できなくなったのは、やっぱりこういう甘さ、というか素人っぽさも原因なんだろう。なんというか、もっと突き抜けたところに、有無を言わさぬ感動があると思う。何のことだか、自分でもよくわからないけれど。宮野美嘉氏とは違う例だけれど、ラノベ全般として、マーケテイングリサーチをして読者の需要を満たす作品を量産してても結局先細りなんじゃないだろうか。もちろん、その中から半端ない天才が現れて別の世界を見せてくれることもあるかもしれないけど。
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