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失楽園殺人事件

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失楽園殺人事件

小栗虫太郎 著 青空文庫(Kindle) 2016.9.20. 読了 ★★★

法水麟太郎もの第4作目。てっきりミルトンの「失楽園」をモチーフにしているのかと思ったら、全く関係なかった。

「黒死館殺人事件」の直前の作品だけあって、かなり近い雰囲気を感じる。孤島の癩療養所、その敷地内にある謎の研究所「失楽園」、同じ日に起きた謎の病死と密室殺人、梅毒菌を使った人体実験、片目の美女、その腹水から取り出された膜嚢、死蝋を配置した六道図絵、ブーメランと煙硝を使ったトリック、稀覯本のコスター聖書、etc. 一見とりとめのない様々な要素が短い作品の中にこれでもか、というくらい盛り込まれ、なんともグロテスクで贅沢な地獄絵図である。そんな現場を逐一調査するなり、あっさり真実を見つけてしまう探偵法水が相変わらずとってもクールだ。

しかしこのシリーズ(私が読んだなかでは)、法水は大抵疲れていたり、体調を崩して具合が悪そうにしている。この作品でも冒頭、やっと休暇をとって温泉にいたところを呼び出されて憂鬱そうにしている。頭脳明晰で、異常な事件を難なく解決しているように見えても、その精神的負荷は限界を超え、確実に体力を奪っているようだ。このあたり、「黒死館殺人事件」で東西の知を自由自在に操って、めくるめくラビリンスを作り上げ、衒学趣味の頂点を極めた著者小栗虫太郎の心の叫びが聞かれるようで興味深い。頭脳労働は命がけだ。(私には一生関係ないだろうけど)
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