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読書メモ

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明治開化 安吾捕物帖

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明治開化 安吾捕物帖

坂口安吾 著 角川文庫 2016.10.3.読了 ★★★★

幕末明治を生き抜いた、べらんめえの偉人といえば勝海舟。頃は明治18,9年。大政奉還の後に悠々自適の隠居生活を送っていたらしい海舟先生のもとに、度々相談に訪れる人がいる。探偵気取りの剣術使い、泉山虎之助が、巷に起こる怪事件に首を突っ込み、解決を目指すも手に余り、海舟先生のご意見を伺いに来るのだ。頭の後ろに小刀をあてて悪血をとりつつ虎之助に仔細を説明させ、心眼を働かせる安楽椅子探偵ならぬ胡坐探偵勝海舟。おもむろに紡ぎ出すその推理やいかに・・・!

そして海舟先生の推理は、大抵外れる。良いところをついてはいても、肝心の犯人は別の人だったりするのだ。実際に事件を解決するのは洋行帰りでイケメンの紳士探偵結城新十郎。後で虎之助から報告を受けた勝海舟が、負け惜しみを言うところでお話が終わる。そんな感じの短編が8編。

前書きの「読者への口上」で著者が「楽な気持ちで推理を楽しみながら」読んでほしい、ということも言っているし、軽く読める小品集かと思えばとんでもない。物語のあまりのすさまじさ、運命の残酷さに読んでいて胃が痛くなる思いだった。そんな中で起こる殺人事件、思慮深く心優しい探偵結城新十郎は、解決にあたって時に警察とは異なる立場をとり、いきな計らいを見せることもある。そして顛末を聞いた勝海舟のもらす、人の世と心の機微を知り尽くした人物ならではの含蓄のある(負け惜しみの)一言が、すうっと心に沁み込むのだ。
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